2024年問題と、その対策について。

WEB活用の教科書

今回の授業の先生



WEB活認定コンサルタント
村上 出(むらかみ いずる)

執筆コラム

今週の授業

4月になり、いよいよ新年度2024年度が始まりました。
連合の発表によれば今回の春闘は33年ぶりの平均5%の賃上げを達成しそうとの事ですが、これが都市部・地方も含め、特に中小企業にも、どの程度実現出来るかが大きな課題と言えそうです。
それには発注側の特に大手企業が自社の人件費だけでなく、取引先の人件費の上昇もどれ程許容した計画に出来るかが問われています。
この人権費にも関係しますが、新年度はこれまで働き方改革が難しいからと先延ばしにされていた建設・ドライバー(運送・物流)・医業関連従事者(医者・看護師・介護士など)などの業種でも残業規制などが適用され、企業の減収減益や従業員の収入減・運賃や工事費の値上げなど、いわゆる「2024年問題」の発生が危惧されています。
  
【運輸業界における、2024年問題とは】
例えば、運輸業界では就業者数の高齢化や減少によるタクシーやバス運転手の不足だけでなく、トラックドライバーの年間時間外労働時間が960時間に制限されることと併せてドライバーの年間拘束時間の上限も従来の3,516時間から原則3,300時間、一日あたり13時間に削減見直しされることにより生じる様々な問題が起きると言うことです。
輸送力が不足することから、荷主や消費者にも、荷物の遅配などの影響として2024年度には14%、2030年度には34%の荷物が運べなくなる(遅配の発生)可能性が指摘されています。
物流が止まれば企業の経済活動は停滞し、翌日配達や時間指定便が当たり前となった個人(消費者)の利便性や生活様式にも影響を及ぼすでしょう。
  
【解決策は、あるのでしょうか?】
この様に、2024年度は物流業界以外も含め大きな影響を及ぼす労働時間の短縮化などの実取組みを具体に取組む元年となります。
これが非常にハードルの高い取組みになるため、2024問題と言われている所以となります。
では、物流業界における2024年問題の影響を低減するには、どの様な対策があるのでしょうか。
それを紐解くには、物流業界の業務とは、どの様な内容かを理解しておきたいと思います。
  
【物流の業務とは】
そもそも「物流」とは、商品や製品が荷主から受取り者(消費者など)に届けられる流れのことを指します。
しかし、ただ商品を運搬することだけを指すのではなく、倉庫内物流と言われる荷役や荷物の保管のほか、商品の包装といった業務も含まれます。
場合によっては海外への出荷手続きや海外からの税関受取り処理なども含まれます。
モノの流れと言う観点からは、サプライチェーンと言う切り口もあり、これは商品の調達から消費までの一連の流れを指します。
具体的な工程は、調達→製造→在庫管理→流通→販売→消費と言う流れです。
この一連の供給連鎖がしっかりとつながることで、消費者へ食べ物や機械装置などを届けられます。
また運送事業者(航空・船舶・鉄道・トラックやバス・タクシーなど)には始業前点検として、体調管理やアルコールチェックと、その記録が求められているほか、貸切りバスや長距離輸送トラックなどは、途中での休憩時間の取得義務の遂行の記録なども責務となっており、近年はIT技術の活用で、これらの対策は進んできました。
  
【物流関連業務の現場における時間削減策の例】
トラックが港湾なども含む荷受け場所に受取りに行っても、荷出し側の出荷の都合などで、待たされるケースも多く、この様な「荷待ち時間」や荷物を積み降しする「荷役時間」など、運転以外の拘束時間は運転などを含む全体の2割程度を占めるなど無駄な拘束時間の増加要因となっています。
これらの解消策として、出荷側がそれぞれの荷物の出荷見通しを情報開示し各トラックはスマホなどで、自分が受取る時刻を確認し、それに合わせて運行する事が可能になってきました。
この様に情報システムを活用し、事業者の垣根を超えて情報を開示・共有することで時短や省力化に効果的な例が出てきました。
  
【製造業などでも活用可能な倉庫内の高度化例】
運輸・倉庫業に限らず、様々な製造業などでも、在庫管理(有効期限のある品物は期限管理なども含む)や倉庫管理(入出庫・配送先など)の業務があり、倉庫管理システムなどによる在庫管理やピッキング指示・管理といった倉庫内業務のIT化により効率化が図られてきています。
基本的に、原材料や製品、部品などはデータによって管理されていますが、一連の情報システムのデータ連携等により、受注から配送までの商品の流れを把握することができます。
また前述のようにトラックが受取りに来る荷物を、計画的にいつ出荷可能に出来るかは、荷主や荷役業者のIT活用による業務管理が必要となっています。
  
【先進的なAMAZONなどの倉庫内業務の例とは】
倉庫内物流では、単なる情報管理ではなく現物の運搬や保管・抽出(ピッキング)などの指示や指示に基づく自動化など装置システムとしての活用が必要となります。
全国に複数個所立地するAMAZONの物流倉庫や工具卸のトラスト中山などの倉庫では、最新システムが稼働し、省人・省力化と計画通りの業務遂行による関係者への情報共有などに取組まれています。
例えば、製造業などの「工程間移送」は、無人・自律搬送車による運搬、保管・格納場所を仕分けるゲート仕分けシステムとバケット自動倉庫のほか、高密度自動収納システムやパレット自動倉庫、格納場所への自走型搬送ロボットや移動式パレットラックのほか、格納場所から出荷品をピッキングして自動で取りまとめる高速荷合わせシステムと出荷ラインの高速自動梱包システムなど、複数の自動化装置などが導入・活用により省力化・省人化と併せて、無駄の無い計画的な業務遂行が実現されています。
  
【その他の周辺業務のIT化の状況について】
倉庫作業の分析、ドライバーの運行管理の把握、オフィスワークにおける業務時間のデータ化など物流に関わる様々なシーンで活躍できるITシステムも製品化・ラインナップされてきました。
あるベンダーの業務改善ツールでは、IoTの活用、デジタル化を促進させ次世代の物流体制を構築可能となっています。
スマホアプリ(Android)とWebの連携により、倉庫内の作業時間を計測可能となり、作業中にスマホに表示されるボタンをタップするだけで、作業履歴を蓄積できます。取得データはWebによって一括管理が可能で、さらに分析ツールを使って、簡単に集計グラフを出力することも可能なため、工数の見える化・共有による改善のための分析やレポート化などもシームレスに実現できます。
  
【まとめ】
「物流」が、商品を届けるまでのモノの流れを示しているのに対し、「ロジスティクス」は、モノの流れを最適化する仕組みを指します。
ロジスティクスの考え方を取り入れ、仕入れ、保管、包装、流通加工、荷役、入出荷などの物流プロセスを全体最適化することにより、来る物流の2024年問題にも対処できる可能性はあるのではないでしょうか。
皆さんの事業や業務でも、この様な視点・考えに立ち、課題に取組む事で少しでも改善のヒントになれば幸いです。

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